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私の留学レポート:マレーシア?マレーシア科学大学~横江ひか里さん(3)~

国際教養大学では1年間の留学が必須となっています。語学留学ではありません。専門科目を現地の学生と共に履修し、本学での卒業単位の一部として認められる必要がある、「本気」の留学。学生が、それぞれ深めたい学問分野に応じて200以上ある海外提携大学の中から選択します。良いことばかりじゃない、ときには苦しいことや辛いこともあるのがAIUの「本気」の留学です。ここでは、そんな学生一人ひとりのストーリーを自身の言葉でレポートしてもらいます。


今回は、マレーシアに留学中の横江ひか里さんのレポート最終回をご紹介します。

マレー人の友人の地元アロースター(Alor Setar) にて「I LOVE ALOR SETAR 」をみんなでシェア!
マレー人の友人の地元アロースター(Alor Setar) にて「I LOVE ALOR SETAR 」をみんなでシェア!(写真中央が横江さん)

「OK Lah!」チャレンジを楽しむマレーシア人との出会い

マレーシアでの留学で特に印象に残っていることは、現地のマレーシア人が「超ポジティブマインド」なことです。マレーシア人は最初はシャイで控えめな印象ですが、一度打ち解けるととてもおしゃべりで、人懐っこくて、好奇心にあふれた人が多い印象を受けました。また、彼らは総じてマイペースなため、待ち合わせ時間に時間通り来ることは少なく、現地の友だちからは「それがマレーシアンタイムだよ」と笑って教えられました。そんなマレーシア人の口癖と言えば“OK Lah!”や“Can Lah!”です。「Lah」というのは単体では意味を持たないのですが、マレーシアで話される英語、通称マングリッシュではよく語尾につけられます。私のマレーシア人の友人も、何かうまくいかないことがあったときでも“Ok Lah”と笑って流していました。そんなポジティブなマレーシア人に影響を受け、留学生活のさまざまなチャレンジを「OK Lahマインド」で乗り越えることができ、また何でも挑戦してみようと思える『Yes Man (“YES”は人生のパスワード)』に近づけたと思います。言葉は行動につながると言いますが、この「Ok lah」にも困難や挑戦を楽しみながら、考え込まずに行動する前向きなパワーがあるように感じました。マングリッシュは慣れるまでとてもリスニングが難しかったですが、最後にはその愛嬌のある話し方が心地よく感じられるほどになっていました。

マレーシアで知った価値観の奥行

マレーシアでの留学は、日本人「らしさ」を考えるきっかけとなりました。マレーシアは親日国家で知られていることもあり、日本への関心が高く、マレーシア人から「日本人は○○だよね」と日本人のステレオタイプを言われることが少なくありませんでした。もちろん彼らに悪気はないのですが、それを聞いたときに、自分が海外の人の抱く典型的な日本人像と一致しないことに対して、少しプレッシャーを感じることもありました。しかしそれは、グローバル化の潮流の中では自然なことであって、むしろステレオタイプに収まらない「自分」とは、これまでさまざまな人や考えに出会い、新しい価値観を身につけてきたという事実そのものなのではないかと思うようになりました。だから今では、無理に日本人「らしく」振る舞う必要はないのだと思っています。

一方で、日本の文化や歴史を学ぶことの大切さも強く実感しました。第二次世界大戦中、日本が大東亜共栄圏の構想を掲げた際、日本軍がマレー半島を含むイギリス領マラヤを軍事占領下に置いていたときの詳しい話など、歴史の授業で深くは学ばなかったことを現地の友人が説明してくれる場面がよくありました。その後自分で調べてみると、占領時代における日本の支配にはさまざまな視点があることを知りました。マレーシア人、日本人、私たちが見ている出来事は同じでも、視点が異なれば解釈も変わります。多様な意見や視点を共有し、建設的な議論ができる環境に恵まれた留学生活を送れたことに感謝すると同時に、これからも歴史を多角的に学ぶ姿勢を忘れずに持っていたいです。

留学中の生活や旅先で、バックグラウンドの異なるさまざまな人との出会いがありました。そういった出会いからインスピレーションを受け、自分がどういう価値観を大事にしたいのか、自分自身としっかり向き合う時間をとることができました。何にこだわりを持ち、どんなことを心がけながら生活したいかという、自分の人生の根幹について考えることができたのは大きな収穫になったと感じています。特に、タイで仲良くなったサーファーと海辺で話した際、「人生もサーフィンも同じ、“Go with the flow”(流れに身を任せろ)だよ」と言っていたことが印象に残っています。その言葉をしっかり心に刻み、いい波が来たときにしっかりとパドリングできるよう、土台づくりをしていくのが今後の目標です。卒業後は自然との共生を形にしていく仕事に携わりたいと考えており、その第一歩として、現在、卒論で伝統的な知恵を生かした現代における自然との共生をテーマに書いています。卒論や普段の生活を通して、このフィールドにおけるさまざまな知識を身につけていきたいです。

留学生の文化紹介イベントの様子
留学生の文化紹介イベントは私にとって特別な一日となりました。

時間という貴重な資源

留学を通して学んだことの一つに「時間の平等性」があります。留学前半は帰国までのカウントダウンを数えては、道のりの長さに弱気になってしまうこともありました。でも、最初は長いように思えた一年にも必ず終わりがあります。ペナン島を出る飛行機の窓から島を眺めていると、留学初日のことをつい最近のことのように思い出しました。あっという間だったと感じる一方で、溢れ出てくるたくさんの楽しかった思い出も苦しかった思い出が、この留学を一年間という時間以上に、かけがえのない価値のあるものにしてくれたと感じました。きらきらした留学生活よりもむしろ、泥臭く頑張りながら過ごした時間が自分をもっと強くしてくれました。時間は誰にも平等に与えられているからこそ、毎日を受け身で過ごすのではなく、自分で創造していくことでもっと有意義に過ごせると思います。

今回で私からの留学レポートは最終回になりますが、最後まで読んでくださり本当にありがとうございました!

国際センターから一言

留学は、語学や学業の成果だけでなく、自分自身と向き合い、価値観を磨く大切な機会であることに改めて気づかされます。留学中は必ずしも順風満帆ではなかったと思いますが、ステレオタイプにとらわれない「自分らしさ」に気づけたことや、試行錯誤しながら過ごした日々は、今後の横江さんが人生で困難に直面したとき、きっと思い返して力を与えてくれるのではないでしょうか。

英語版ウェブサイトでは、留学生たちの本学での留学体験記を「Student Voice」として紹介しています。ぜひこちらもご覧ください。